「家計簿アプリを入れてみたけど、3日で開かなくなった」「やる気はあるのに、なぜか続かない」——そんな経験、ありませんか。
実はこれ、あなたの意志が弱いからではありません。前回の記事「ADHDで家計管理が続かない人の特徴と原因」でお伝えした通り、ADHDの特性上、「毎日記録する」「こまめに見直す」というやり方そのものが、そもそも続けにくい設計になっているんです。
私自身、ADHD当事者として、そして元看護師、現在はFP(ファイナンシャルプランナー)として家計改善のお手伝いをしている立場から、この記事では「では実際に何をすれば続くのか」を、私が3年間実際に運用している仕組みをそのまま公開する形でお伝えします。理論だけでなく、3年間の中で失敗して修正してきた経緯も含めてお話しします。
ADHDの家計管理が「続かない」のは意志の問題じゃない
前回の記事で詳しく解説しましたが、ADHDの特性には「先延ばし傾向」「興味の持続が難しい」「細かい作業の継続が苦手」といった傾向があります。家計簿を毎日つける、レシートを毎回入力する——こうした「こまめな手作業」を前提にした方法は、ADHD特性とそもそも相性が悪いんです。
つまり、続けるために必要なのは「もっと頑張ること」ではなく、「頑張らなくても続く設計にすること」。これが、これからお伝えする仕組みの土台にある考え方です。
3年間運用してわかった「仕組み化」の5原則
3年間、試行錯誤しながら今の形に落ち着きました。今の仕組みを支えているのは、次の5つの原則です。
① 手で動かす項目をゼロにする
給料が入ってから生活費を使うまでの間、自分の手で「振り込む」「移す」という操作が極力発生しないようにしています。自動連携・自動振替を前提にすることで、「やるのを忘れる」「やる気が出ない日にやらない」というADHD特有のつまずきをそもそも起こさない仕組みにしています。
② 口座を「見る専用」「使う専用」に分ける
お金を「貯める・管理する口座」と「日々使う口座」を分けています。同じ口座に全部入っていると、今いくら使えるのかが感覚的にわからなくなり、衝動買いにもつながりやすくなります。
③ 先取りは給料日当日、判断する前に終わらせる
貯金や固定費の振り分けは、給料が入ったその日のうちに、自動で終わらせています。「今月は少し多めに使っちゃおうかな」という判断が入る前に仕組みで完了させてしまうのがポイントです。
④ 分類は「アプリ標準」より「自分が入れやすい項目」を優先する
家計簿アプリには最初から「食費・日用品・交際費・美容費…」といった細かいカテゴリが用意されていますが、それをそのまま使うのはやめました。今は、自分が入力するときに迷わず・把握しやすい項目だけにカスタマイズしています。大事なのは「アプリが用意した正しい分類」に従うことではなく、「自分が続けられる項目」にすることです。分類が細かすぎたり、自分の感覚と合わない項目だと、入力のたびに迷って続かなくなります。
⑤ 日々の記録はハードルを下げて習慣化、振り返りは月1回にまとめる
日々の支出記録は「とにかく軽く」が前提です。細かく分析しようとせず、記録すること自体のハードルを下げているので、これはもう完全に習慣になっています。一方で「今月何にいくら使ったか」「あといくら使えるか」をしっかり振り返るのは月1回に絞っています。毎日がっつり見直そうとすると続かないので、日々は記録だけ、判断・分析は月1回にまとめてやる、というすみ分けです。
実際の口座・お金の流れ(3年間の運用フロー公開)
私が実際に運用しているのは「3口座管理法」という考え方です。お金の流れをざっくり言うと、次の3段階になります。
- 生活費口座:給料が入ってくる口座。クレジットカードの引き落としもここから行われます。日々の収支がすべてここを通る、いわば「入口」の口座です。
- 生活防衛資金口座:生活費口座から、まずここにお金を移します。急な出費や収入が止まった時のための「守りのお金」を貯める口座です。
- 投資用口座:生活防衛資金の次に、こちらにお金を流します。将来に向けて育てていくお金の置き場所です。
つまり「給料が入る→生活防衛資金へ→投資用へ」という順番でお金が流れていく仕組みを先に作っておき、そこに乗せるだけ。毎月「いくら貯金しようか」と考える必要がない状態にしています(この3口座管理法の考え方自体は、家計改善の基本としてよく知られている方法でもあります)。
具体的に使っているのは、楽天銀行とSBI銀行の2つです。
- 楽天銀行:家族で使う生活費口座。生活費全体の収支はここで一括管理しています。
- SBI銀行:目的別に口座(または口座内の振り分け)を分けて、積立などをカテゴリごとに管理する役割です。
家計簿アプリは「マネーフォワード ME」を使っていますが、入力はあえて手入力にしています。意外に思われるかもしれませんが、慣れれば1回30秒ほどで終わります。レジ待ちの数十秒や、レシートをゴミ箱に捨てる直前など「支出が発生した瞬間」に入力するタイミングを決めておくことで、手入力でも負担にならないところまで習慣化しました。ここで自動化しているのは①の原則にある「口座間でお金を動かす作業」であって、「日々の支出を記録すること」はあえて自分の手で行う——という役割分担にしているのがポイントです。
3年間で失敗した・修正したポイント
最初からこの形だったわけではありません。むしろ何度も組み直してきました。
以前は、すべての収支を1つの銀行口座だけで管理していました。この方法だと、お金が少しずつ貯まって残高が増えてくると、「まあこれだけあるなら、ちょっとくらい使ってもいいか」とクレジットカードの引き落としが増えていく。そして年に何度かある不定期の大きな支出のタイミングで、残高がどかっと減る——これを延々と繰り返していました。残高という「目に見える数字」に気が緩んで、また使ってしまうというループです。
このループを抜け出せたきっかけは、お金で大きな失敗をしたことでした。そこから本格的にお金の勉強を始め、「各支出にあらかじめ予算を立てておくこと」「年単位でしか発生しない支出には、日々の積立で備えておくこと」の2つが家計を安定させるうえで欠かせないと学びました。それを実践する仕組みとして今の3口座管理法に行き着いています。
こうした失敗と修正を経て、今の形に行き着いています。完璧な仕組みを最初から作ろうとしなくていい、というのも伝えたいメッセージの一つです。
FP視点で見た「この仕組みが続く理由」
ここまでお伝えした5原則は、実はFPの実務や行動経済学でもよく語られる「仕組み化」の考え方そのものです。先取り貯金、自動化、選択肢を減らすこと——これらは「意志力に頼らずに望ましい行動を続けさせる」ための代表的な手法として知られています。
ADHDの特性が「その場の判断・こまめな手作業に弱い」のだとすれば、対策の方向性は明確です。判断や手作業が発生する場面そのものを減らせばいい。これは精神論ではなく、特性に合わせた合理的な設計だと言えます。
今日からできる最小の一歩
5原則を全部一気にやろうとすると、それ自体が挫折の原因になります。まずは1つだけ、今日中にできることから始めてみてください。
たとえば、給料が入る口座から貯金用の口座への「自動振替」を1つ設定するだけでも構いません。それだけで、①と③の原則が半分動き出します。
ただ、こうした仕組みづくりを一人で進めるのが難しいと感じる方も多いはずです。「自動化したいけど何から手をつければいいかわからない」「仕組みを作っても結局崩れてしまう」という場合は、一緒に設計していく伴走サービスもご用意していますので、必要なタイミングで検討してみてください。
まとめ
ADHDの家計管理が続かないのは、意志が弱いからではなく、仕組みが特性に合っていないからです。手で動かす項目を減らし、判断する前に自動で終わらせ、見る頻度を絞る——この3年間で行き着いた仕組みは、決して特別なものではありませんが、「続く」ことを最優先に設計したものです。まずは1つから、今日始めてみてください。
筆者についてもっと知りたい方は、こちらの記事もどうぞ:ADHDの私が家計改善伴走サービスを始めた理由


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